第19章 いつか、また
私の口の端から離れた恵くんの指先を見ると、赤い飴の小さな欠片が付いていて。
それをわざわざ拭ってくれたのだと悟り、胸の高鳴りを隠しながらお礼を告げて、私はまた手元のリンゴ飴にサクッと噛み付いた。
すると、ふっと小さく鼻を鳴らした恵くんは、自分の口元を人差し指でトントンと指差しながら、「また付いてんぞ」と揶揄うように私を見下ろす。
「あ……っ、ごめ───」
「んじゃ、次は僕の番かな♡」
「!?」
次は自分で拭おう。そう思った瞬間。
背後からヌッと五条さんの顔が私の肩に乗り、驚く間もなく親指で私の口元を拭われる。
そして五条さんは親指をそのまま自分の唇へと運び、パクリと口に含んで舐めとった後、「あま〜い♡」と上機嫌に呟いた。
「五条さん!!いつからいたの?」
「え、ずっと後ろに居たけど」
真顔でそう言い切った五条さんは、「ちなみに悠仁と野薔薇もいるよ〜」と付け加え、背後に視線をやる。
それに釣られてぎこちなく振り返ると、不機嫌そうにイチゴ飴にかじりつく野薔薇ちゃんと、両手いっぱいにフルーツ飴を持った虎杖くんが佇んでいた。
「…………」
「のっ、野薔薇ちゃん……?」
視線が絡んだ瞬間。
物凄い勢いで飴を食べきった野薔薇ちゃんは、ゴミを虎杖くんへと押し付けて、鬼の形相で私の元へ向かってくる。
嫌な予感がして目を強く瞑ると、次の瞬間には私の両頬が左右に強く引っ張られていた。
「テメェら……公共の場でイチャつくなやコラァ!!」
「ぅ……ごべんらさい……」
びよん、と両頬を伸ばされて、さっきまでの幸福感が薄れていく。
それなのに、野薔薇ちゃんに触れられているというまた別の幸福感が胸を満たすのだから、私は本当に野薔薇ちゃんが大好きなのだと分からせられてしまった。
「伏黒も ああいうことすんだな!」
「………何のことだ」
近くで恵くんと虎杖くんのやり取りを聞きながら、私は両頬に与えられる痛覚に快楽を感じ始めてしまう。
するとパッと両手を離されて「ちょっと、気持ち悪い顔しないでくれる?」とお怒りのコメントを寄せられた。
しかし、すかさず「もうしなくていいの?」とニヤける頬をそのままに問いかければ、「気持ち悪いわ!!」と数歩距離を取られてしまった。