第19章 いつか、また
真っ赤なリンゴ飴と、隣を歩く恵くんの顔。
それを何度も往復して見つめていると、恵くんは「……これで少しは食いやすくなっただろ」と素っ気なく言い捨てて、ふいっと視線を前へと戻してしまった。
普段は中々見られない、恵くんの大きなひと口と、その薄い唇の隙間から一瞬だけ覗いた舌の動き。
ソレがいつも自分の舌と深く絡みあったり、自分の身体に触れているのだ、とふと考えてしまった時には、もう遅かった。
「お前、顔………」
「っ……!!あ、や、ちょっと、暑くて!!」
何かを察したように、私の火照りきった顔をじっと凝視してくる恵くん。
その鋭い視線から必死に逃げようと、しどろもどろに言い訳を並べながら慌てて顔を背けてみる。
だけど、毎日一緒にいる恵くんに その場しのぎの嘘なんて通用するはずもなくて。
「……ナニ考えてんだよ」
「なっ、なにもっ、考えてない……!!」
そう声を荒らげて言い捨てて、これ以上の追及をされないよう、恵くんが作ってくれたリンゴ飴の断面へと勢いよく歯を立てる。
すると今度は薄い飴が割れる音と、シャクッという瑞々しい林檎の音が、ダイレクトに鼓膜まで届いた。
「……!!」
私が想像していた"りんご飴"とは全く違う、甘酸っぱくてシャリシャリとした新しい食感に驚いて、目を丸くして恵くんを見つめる。
すると「……今度は何だ」と、また呆れたような視線が上から降ってきた。
「おいひい……っ、これ、すっごく美味しいよ…!!恵くん!」
「……そうか」
今度は私がもぐもぐと口を動かしながら呟くと、恵くんの細くて綺麗な指先が、私の口の端をすっと優しく掠めた。