第19章 いつか、また
「あっ、飴でしょ!?舐めるものじゃないの!?ペロペロキャンディみたいに……!」
慌てて飴から口を離して恵くんに抗議すれば、ついに耐えきれなくなった深い深いため息が、彼の口から漏れた。
「噛んで食うもんなんだよ」
「噛む!?こんなにおっきいのに……!?」
飴から伸びた割り箸の棒をぎゅっと握りしめて恵くんに見せつけると、「そういうモンなんだよ」と、そっけなくあしらわれてしまう。
(……そっか。これ、噛むものなんだ)
初めてのお祭りは何もかも分からないことだらけだ。
それでも、きっと隣にいる恵くんがこうして沢山教えてくれる。そう思えば、不思議と不安なんてなくなった。
(……ふふ)
また嬉しさでニヤけてしまいそうな頬を必死に制すため、私は一度首を大きく振ってから、目の前の真っ赤で大きな飴玉に歯を立てる。
……しかし、歯は表面をツルツルと滑るばかりで、私の力ではなかなか噛み切ることが出来なくて。
「……………なんだよ」
飴に歯を立てたまま。
助けを求めようと こっそり恵くんを見上げると、彼もまた、私を見下げていた。
「…………かめない……」
そう言って素直に視線で助けを乞えば、恵くんは今日一番の深い溜息を吐き出して、私の手ごとリンゴ飴の棒を自分のほうへとぐいっと引き寄せる。
────そして。
「……こうやって食うんだよ」
「え……っ」
ガリッ、と飴が割れる音と共に、恵くんの大きな一口が飴の一部を豪快に持っていく。
「ほら」と目の前に差し出された断面には、林檎の白い果肉と、その表面に薄く張り付いた赤い飴の層が見えた。
「な、中に林檎が入ってたの……!?」
「ん、」
もぐもぐと口を動かしながら頷いた恵くんは、口周りに付いた飴の破片をペロリと舐めとってから、もう一度私へと視線をくれる。
その一連の動作が、……なんだか妙に色っぽくて、扇情的で。
私は飴を持ったまま、ぽかんと口を開けて恵くんに魅入ってしまった。