第19章 いつか、また
屋台の前。
列が少しずつ進んで ようやく私たちの番が回ってくると、待ってましたと言わんばかりに二人が声を張り上げた。
「私はイチゴ飴!」
「俺は全部!!」
「バカが!全部は持てねぇだろ!!」
「貰った瞬間食うからいーの!!」
ハイハイ!と勢いよく手を挙げて注文する野薔薇ちゃんと、無茶を言う虎杖くん。
そんな二人を、屋台のおじさんは「威勢がいいねぇ」と楽しそうに笑って見つめている。
賑やかな彼らの背後で、私は隣に立つ恵くんへと視線を上げた。
「恵くんは?」
「……俺はいい」
目の前で盛り上がる虎杖くんたちを眺めながら、恵くんは小さく首を横に振る。
もともと甘いものが得意じゃないからそう言ったのだろうけれど、お祭りに来てから恵くんはまだ自分用のものを何ひとつ買っていない。
それが少しだけ気にかかって、私は彼の浴衣の袖をそっと引いた。
「じゃあ、私のリンゴ飴、半分こする?」
「要らねぇ。後でタコセン食うし」
こちらには目もくれず、そっけなく言い放った恵くん。
だけど次の瞬間には帯の隙間から財布を取り出して、「リンゴ飴ひとつください」と、屋台のおじさんへ注文を済ませていた。
「……?たべるの?」
「いや、お前の分」
「え!?」
「まいど!」と眩しいほどの笑みのおじさんからリンゴ飴を受け取った恵くんは、それをひょいと私へと手渡して財布をしまう。
「何で!?お金……っ、」
「……要らねぇよ。こんくらい」
慌てて巾着から財布を取り出そうとする私の手を制して、恵くんが列を離れていく。
それを駆け足で追いかけると、歩幅を狭めた恵くんに「危ねぇだろ、走んな」と低い声音で怒られてしまった。
「……ねぇ。いつも、お金出してもらってるよ」
真っ赤なリンゴ飴の透明な包装を外しながら、申し訳なさから少し口を尖らせて呟く。
すると恵くんは前を向いたまま、だけど私の隣をぴったりと歩きながら、「……いいんだよ。やりたくてやってんだ」と、小さく独り言を零した。