第19章 いつか、また
「……いい加減 屋台回るわよ。腹減った」
耳の赤らみが収まったからか。
パッと振り返った野薔薇ちゃんはそれだけ言い残し、浴衣の裾を揺らしながらずんずんと前を歩き始めた。
そして残された私たちは、自然と彼女の背中を追う形で歩き出す。
「釘崎、さっきパイン棒食ってたじゃん。あとたこ焼き」
「うるっっっさいわね!!腹減ったっつってんだろ!!」
「情緒!!!」
不意に野薔薇ちゃんの隣に並んだ虎杖くんは、素朴な疑問を問いかける。
けれど大声で一蹴され、私たちの群れの方へと逃げ戻ってきてしまった。
「……ナマエ。アンタが食べたがってたフルーツ飴の屋台、この先にあったわよ」
「……!!」
逃げ戻る虎杖くんを冷ややかな目で見届けた後、一転して優しい野薔薇ちゃんの視線が、真っ直ぐ私へと向く。
些細な会話の内容を覚えてくれていることが嬉しくて、私は虎杖くんと入れ替わるように、野薔薇ちゃんのすぐ隣へと並んだ。
「下見、してくれてたの?」
「………別に。たまたま通り掛かった所にあっただけ」
「ふふ、そっかあ」
相変わらず、野薔薇ちゃんは素直じゃない。
言葉の裏の本心に気づき、顔を覗き込んで「ありがとう」と御礼の言葉を呟けば、野薔薇ちゃんはまた ぷいっとそっぽを向いてしまった。
「素直じゃねえなあ、釘崎"も"」
「………オイ虎杖。今 一瞬こっち見たろ」
「……ミテナイヨ」
数歩後ろで、虎杖くんと恵くんのやり取りが聞こえる。
雑踏の中でも聞き慣れた声音は耳馴染みがよくて、不思議と聞き取りやすかった。
背後で聞こえる会話をBGMに野薔薇ちゃんの隣を歩いていると、"フルーツ飴"と大きく書かれた屋台の前垂れが見える。
それが野薔薇ちゃんにも見えたのか、彼女は「行くわよ」と私の手を取り、人混みを器用に避けながら、私を屋台へと導いてくれた。