第19章 いつか、また
「アンタたちが遅いから、二年は先に屋台回って行ったわよ」
口をへの字に曲げて、怒った様子の野薔薇ちゃん。
恐らく、きっと……大好きな真希さんと一緒に屋台を回りたかったんだろう、とその心中を察する。
「ごめんなさい……」
野薔薇ちゃんの思いを汲んで深々と謝れば、「それやめてくれる?」とさらに不機嫌に怒られてしまった。
「そうやって謝られると、昔のアンタ思い出してムカつく」
「なっ、なんで…!?私、そんなに嫌われてたの!?」
「ええ。常に他人の様子伺ってるところとか、かなり嫌いだったわ」
「酷い……!!!」
衝撃の事実に下げていた頭を勢いよく跳ね上げる。
すると、不敵に笑った野薔薇ちゃんに、空けた左手でギュッと片頬を力強く摘ままれた。
「アンタだって、私のこと避けてたでしょ」
「う゛ッ……」
「お互い様よ、お互い様」
見事に図星を突かれて肩を跳ねさせて動揺すれば、野薔薇ちゃんはそんな私を見て鼻高々にそう言った。
「……でも、今は、好きだよ」
解放された頬を擦りながら、小さく呟く。
「野薔薇ちゃんも、虎杖くんも、五条さんも恵くんも。……大好き」
自分でも聞こえるか聞こえないかくらいの呟きだったから、てっきり雑踏の波にかき消されたと思った。
けれど、意外にも私の声はみんなの耳にちゃんと届いていたのか。
ふと顔を上げると、野薔薇ちゃんだけでなく、全員の視線が真っ直ぐに私へと向いていて。
それが何故だか とても嬉しくて、自然と口角が緩んでいく。
「私、高専で皆と出逢えて良かった!」
今度は雑踏に負けないように、ちゃんと皆の胸の奥まで伝わってほしくて、声を張って満面の笑顔とともに言い放った。
そんな私を見た虎杖くんと野薔薇ちゃんはポカンと口を開けていて、五条さんはいつものようにカラリと笑っている。
そして恵くんは、一瞬だけ驚きなように目を見開いたあと、ほんの少しだけ口角を緩めて笑っていた。