第19章 いつか、また
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タクシーが浅草付近に到着し、告げられた料金を素早く支払おうとした時。
助手席の五条さんが私よりも手早くカードを差し出し、結局、私は渋々財布をしまって車外へ出た。
「五条さん、ありがとうございました」
車の前で改めて深々とお礼をする私を見た五条さんは、サングラスの奥の目を細めて「いいのいいの!」と私の肩をポンと軽く叩いた。
「僕がナマエにお金を出させるわけないでしょ!」
そう言われても、私も呪術師として自分でお金を稼いでいる身だ。
これまで沢山お世話になった手前、どうしても後ろめたさが胸の奥で燻ってしまう。
「気にすんな。金なんて腐るほど持ってる人だろ」
「事実だけど、他に慰め方なかったの?」
「事実なら良いでしょ」
そんなやり取りを聞きながら顔を上げた私は、目の前に広がる光景に息を呑み、ぼうっと魅入ってしまった。
色とりどりの浴衣を着た大勢の人達が、賑やかな雑踏の中を楽しそうに微笑みながら歩いている。
軒先にそこかしこと飾られた提灯の光は、まだうっすらと明るい秋空を幻想的に彩って輝いていた。
(…………綺麗)
提灯の灯りも、そこに溢れている人たちの幸せそうな笑顔も。
全部がキラキラと眩しくて、なぜだか少しだけ泣いてしまいそうになる。
「……ナマエ?」
「っ、」
ふと五条さんに顔を覗き込まれて反射的に顔を背けると、ふっと軽く笑った五条さんに優しく頭を撫でられた。
ヘアセットが崩れないように。それでも、私を安心させようとする五条さんの気持ちが、頭頂から伝わってくる。
「今日まで連れて来てあげられなくて、ごめんね」
「え……」
突然の静かな謝罪に顔を上げると、五条さんは私を見下ろして寂しそうに笑っていた。
私が謝ることは沢山あれど、五条さんが私に謝罪すべきことなんてひとつも無い。
お祭りは、年に数日、決まった日にしか行われない特別な行事なのだと、この一週間で知った。
忙しい五条さんがスケジュールを合わせられることなんて、奇跡に近いというのに。
どうして五条さんは今、罪悪感を滲ませながら、慈愛に満ちた瞳で私を見つめているのだろうか。