第1章 兎に傘
扉を開き、痛い程の光を背に立っていたのは――真っ黒な髪を耳にかけ、頬に長方形のタトゥーを入れた男だった。
その人は細いのに、とても大きく見えた。
身長が高いからとは関係なく、大きく見えた。
怖くて、震える指先を握りながら、誰が呼ばれるのかと、息を呑んだ。
心臓が嫌な音を立てて速くなる。
「出ろ。生きたければ」
低くて冷たい声が響く。
だけど、どこか温かかった。
――優しかった。
それでもまた始まる痛みにもう耐えられないと、恐怖が膨れ上がっていく。
荒くなる呼吸、震える身体、ドクンドクンと鳴る鼓動。
身体が熱くなっていく、血が沸騰しているようだ。
みんなが部屋から雪崩れのように出ていく。
血が、なくなる__。