第1章 兎に傘
荒くなった息が落ち着いて目を閉じた。
意識が微睡みに沈む前に部屋の扉が開く。
二段ベッドの下で寝ていた私を少し見下ろす気配がし、無人さんはカーテンを閉めて上に登った。
いつも寝る場所はバラバラだった。
私にとって上か下かなんてどうでもよくて、ただ近くに無人さんの気配があればそれでよかった。
一緒に寝ることもあった。
「無陀野先生……むだ…無人さん…」
「なんだ、早く寝ろ」
「ふふっ」
名前で反応した彼に思わず笑みが零れる。
前にもこんなことがあったなと、「早く寝ろ」という降ってくる声を聞きながら温かさを感じて、微睡みに沈んでいった。