第2章 傘の内側
呼吸を整えた無人さんは、カーテンを開けてベッドから降りる。
明かりを点けて、背中を向けたままティッシュで処理をしていた。
一瞬動きが止まって、丸めたティッシュをゴミ箱に放り投げる。
カチャカチャとベルトをつけて、振り向いた。
私の下腹部に放った自身の欲を拭いて、また新しいティッシュを取り出した。
無人さんはまだ口を開かない。
まだ熱い性器をティッシュで撫で上げて、何かを確認していた。
その姿をボーッと見つめる。
捨てられたティッシュがゴミ箱の中で転がって、止まる。
それを合図にしたかのように下腹部を撫で、無人さんは温かくて穏やかな声を空気に溶かした。
「痛いだろ。
初めてか?」
なんのことかわからずに首を傾げる。
「生殖機能を抑制する薬が投与されていたのは知ってる。
投与をやめてから数年、予兆すらなかった。
―――性欲はあったみたいだがな」
クスッと笑って、身体を起こされた。
額に触れた唇は弧を描き、また開く。
「"俺に触れられて、女としての機能を取り戻した"
と、勝手に思っておく」
声の明るさから、機嫌が良いのだと思った。
何を言っているのか一切わからなかったけど、無人さんが嬉しそうだったから、ただ頷いた。
「俺の女だ」
呟いた言葉の意味はわからない。
ただそれを、私が好きなものに言い換えた。
「月は無人のもの」