第2章 傘の内側
みんなが近付いてきて、私を囲む。
皇后崎くんはその場に座り込んだ私の背中を撫でてくれた。
「白兎さん、ゆっくり息吐いて!」
遊摺部くんの声が遠くで聞こえる。
目の前にいるのに…。
言われた通り、ゆっくり息を吐くことに集中した。
「俺、ムダ先呼んでくる!」
一ノ瀬くんは走って教室を出ていった。
頭が真っ白になる。
皮を剥がされる感覚がした。
何も起きていないのに頭に流れるのは、桃にされた痛いこと。
苦しさからなのか、痛みからなのか…涙がぽろぽろと零れていく。
無人さんがいないと、私…苦しい。
あなたがいる世界じゃないと、息が出来ない。
私を独りにしないで…。
「白兎……月。
月、大丈夫だ。
誰もお前に危害を加えない。
ここに桃はいない」
皇后崎くんの声は無人さんのように、低くて温かかった。
布越しに感じる、皇后崎くんの手の温度。
髪を優しく撫でてくれた。
無人さん以外に触れさせたらダメなのに…締め付けられた胸が、広がっていく。
私の世界に――無人さん以外の色が増えていく。
塗り潰すのではなく、世界が広がっていく。
ゆっくりと預けた身体は、皇后崎くんの胸に包み込まれた。