第2章 傘の内側
白を黒に…ってどういうことなんだろう…。
寂しさを滲ませた足取りで教室に戻る。
追いかけたかったけど、追いかけることを許されなかった。
ローラースケートを滑らせる速さがそう言っていた。
視線が私に集まって、誰も喋らない。
無人さんがいない、私の世界が崩れて広がる。
「白兎月。
お前のことは、京都のやつから少し聞いた。
桃の実験施設にいたんだろ」
皇后崎くんだっけ…沈黙を破ったのは彼だった。
近付いてきた皇后崎くんが私の肩に腕を回し引き寄せる。
耳元で少し楽しそうな声がした。
「あいつの弱点を教えろ」
「あいつ?」
「無陀野に決まってんだろ」
無人さんに弱点なんてあるんだろうか…。
そんなことより…近い。
「ご、ごめん…近い。
無人さんに"俺以外に触れさせるな、見せるな"って言われてるの」
皇后崎くんの胸を軽く押して離れさせる。
離れていく腕の袖から少し肌が見えた。
元の位置に戻った腕を見て、袖を少し上に上げる。
見えたのは――縫い目の跡だった。
継ぎ接ぎ…。
顔を隠す黒いマスクをそっと下ろしてみる。
皇后崎くんは何も言わないし、止めることもしない。
マスクの下は傷跡と縫い目。
実験をされた時の記憶が…痛みが蘇る。
「な、無人さん…たすけ……
いたい…はっ、っ…はっ」
息が上手く出来ない。苦しい。
私の様子を見た皇后崎くんは、すぐに傷跡を隠した。