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【桃源暗鬼】有用と無駄〈無陀野無人〉

第2章 傘の内側


男子はグッチョッパーで決めたらしく、遊摺部くんが無人さんと同室になった。


「先生と一緒ってことは――
もうひとり遊びは不可能…」


ティッシュの使用量が減る?ひとり遊び?
遊摺部くんはどんな遊びをしてるんだろう…。

私は、無人さんから引き寄せたので、そのままくっついたままでいた。
漣さんがまだ何か言っている。

チラッと遊摺部くんの方を見ると、すごい顔で睨まれた。
人ってそんな顔出来るんだ…。


「非リアの前でイチャつくのはどうかと思いますぅ
しかも、"教師"が!」


イチャつ…いてるように見えるのだろうか…。
くっついてることがイチャつくということなのかな。


「お前らがうるさすぎて、怖がってる。
今までこいつの世界は俺だけだったんだ。
うるささとは無縁だ」


遊摺部くんに答えた無人さんは私の手を離し、扉へと向かっていった。
どんどん離れていく。
置いて行かないで…。

咄嗟に追いかけて、教室から出た無人さんの裾を掴む。
教室からみんなの声が響いていた。


「俺としか会話してなかっただろ。
少しでも話してこい」

「無人さんがいないと…
ねぇ、やっぱり嫌です。
一緒がいい…」


真っ黒な瞳を見上げて、ふるふると首を振る。
無人さんの世界にいさせて…。


「……お前が嫌いな"痛み"を与えるぞ」


痛み?
殴るの?無人さんが?

冷徹な声が鼓膜を震わせる。
どんな声でもよかった。
無人さんの声なら、私の世界に色を与えてくれる。


「白いお前を俺が黒に染めてやる。
痛いのが嫌なら、この会話は無駄だ」


痛いのは…やだ。
裾を掴んでいた指の力が抜けると、するっと布が抜けていって、無人さんの背中がローラーの音と共に遠ざかっていった。


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