第45章 文化祭とオムライス
紅海と五条が入場者の流れがスムーズにいっている事を確認していると
人の流れの向こうに、見覚えのある姿があった
黒いスーツで落ち着いた佇まい
周囲の一般来校者に紛れるようにして、校内を静かに見回している
『……あれ?』
紅海の声が止まる
「どうした?」
五条が視線を追う
『……叔父さん?』
男が振り向くと、視線が重なる
「紅海…」
千草だった
『どうしたの?今日…文化祭見学?』
「仕事だ」
短い返答に、少しだけ紅海の肩が強ばる
その様子をみて五条が千種に目配せをする
≪紅海に優しくしてあげれば?ほんとは嫌われたくないんでしょ?≫
以前、浅葱の神社で五条と会った時に言われた事を思い出す
千種は、はぁ…とため息をつき、仕切り直す
「一般参加者に紛れて、文化祭が滞りなく行われているか、確認している」
『そっか……』
紅海は少しだけ目を丸くして、それから笑った
『でも、会えて嬉しい』
千草の表情が、ほんのわずかに止まる
「…だから、仕事だと言っただろう」
『うん』
紅海は、それ以上何も言わなかったが
少し嬉しそうにしていた
千草はそんな紅海を見て、何か言おうとしたが言葉がでない
「……元気そうだな」
『うん、元気…叔父さんも元気だった?』
「ああ、まぁ…」
短い会話
それで終わってしまう
千草が再び周囲へ視線を戻す…
紅海も、生徒たちの方へ目を向ける
『じゃあ、ちょっと、受付でも、様子みてこようかな…叔父さんも、お仕事だろうけど、生徒達の催し物、楽しんでいってね』
「ああ…」
受付へ紅海は歩きだす