第45章 文化祭とオムライス
五条は黙って二人を見ていた
千草は紅海を嫌っているわけではない
紅海も千草を怖がっているわけではない
それなのに、二人の間には、言葉に出来ない何かがある
長い時間をかけてそういう距離に落ち着いてしまったような
そんな関係…
だが、今日の千種の反応からして、変わろうとしているんだと感じた
千草もこちらに気づいた
「五条さん」
「チグさん、おつかれ~」
軽く手を振ると、千種がわずかにピクッと反応する
「今日は非術師も入場してくる…リスクが有るにも関わらず、文化祭を開催する…良く解らない恒例行事だよ」
「まぁ、文化祭=青春だからね」
「君は仕事を、ちゃんとしているのか?」
「してるしてる!ほら、ちゃんと先生してるでしょ?ほらほら」
周りから見れば、ふざけた目隠しをした長身の男がくるくる回っているようにしか見えないが…
「……はぁ…まぁ良い」
それ以上は言わない
「紅海、嬉しそうだったでしょ?だからさ、また会いに来てよ」
千種に、そう声をかけると、じゃっと、手を振って紅海の方へ去っていった
千種も、なにも言わず人混みへ紛れていく
受付…スムーズに案内書を渡して人々が流れていく
「……嬉しそうだね」
背後から五条が声をかけた
『え?』
「叔父さん来たしね?」
『あ……うん』
紅海は照れたように笑う
『ちょっとね…嬉しかった』
「そっか」
五条はそれ以上、何も言わなかった
文化祭の喧騒が、二人の間を通り過ぎていく
このイベントに携わる皆が楽しんで幸せな気持ちになれたら…
紅海はそんなふうに思いながら、入場者へ笑顔を向けた