第46章 秋の香りと想い
══閑話══
「店長」
「何?」
「奥のテーブル、見ました?」
「どこの?」
「奥です奥、五名様の」
店長は注文票から顔を上げ、ホールの奥へ視線を向けた
そして、数秒
「…ああ」
「ですよね!?」
「いや、何が?」
「顔面偏差値です!!」
「声が大きい」
若い店員は慌てて口を押さえた
奥のテーブルには、男女五人
何をどうしたら、あの顔でお好み焼きを食べに来ることになるのか
「…あの白髪の人、モデルですか?」
「知らないよ」
「芸能人?」
「知らないって」
向かいの席には、金髪に眼鏡の男性が座っていた
姿勢が良くスーツが似合う
おまけに、料理を取り分ける手つきまで妙に上品だった
「待ってください…金髪の人も相当ですよ
白髪の人が派手すぎて、落ち着いて見えるんですけど」
「いや、普通にめちゃくちゃ格好いいんですけど!?」
「だから声が大きいって!」
その隣では、黒髪に薄い色付きの眼鏡をかけた男性が、穏やかな表情で話を聞いていた
「…あの黒髪の人も、いいですね」
「分かる…なんか、安心感がある」
「彼氏にするならああいう人がいいかも」
「お前ら、さっき白髪の人を見て芸能人かって騒いでたのに」
「それとこれとは別です!!」
「何が別なんだ」
さらに、同じ席に男性が一人
他に比べれば、見た目の印象は控えめだった
「あの人は…普通ですね」
「おい」
「いや、悪い意味じゃなくて!ほら、ほかの四人が強すぎるんですよ!」
「四人?」
店長が、テーブルを見直した
そして、紅海を見た
「…ああ」
「そうなんです!あの女の人も、普通に綺麗なんですよ」
「うん」
「何?どういう集まり?顔面オーディション?」
その時、別の店員が戻ってきた
「何してるんですか?」
「見て」
「何を?」
「あのテーブル」
店員は視線を向けた
「…え?」
「でしょ?」
その時、白髪の男性がふいに顔を上げ店員たちと、目が合う
男性は、にこっと笑った
「っっっ!!」
若い店員が無言で厨房へ逃げ込んだ
「無理!反則!」
「何の反則だよ!!」
店員達はひとつの結論にたどり着いた
「少なくとも、うちの店の顔面偏差値を一晩で壊滅させたことだけは確かだね」
「店長、顔面偏差値って壊滅するものなんですか?」
「今、したんだよ」
店長の遠い目が物語った