第42章 影と幽霊
══閑話══
幽霊が怖い
昔から、紅海はそうだった
呪霊相手なら平気な顔して突っ込んでくくせに、正体のないものの話になると途端に弱い
さっきだって、後ろから声をかけただけであの有様だ
「ひゃあ!!」
あんな声、出るんだ
……まあ、面白いけど
僕だと分かった途端、あからさまにほっとしてた
普段の紅海は、妙に我慢強い
疲れてても困っても「大丈夫」「平気」
誰かに頼るくらいなら、自分で何とかしようとする
そういう性格なのは昔から知ってる
だから余計に、ああやって露骨に怖がってるのを見ると少し笑える
「紅海、昔から幽霊苦手だったもんね」
そう言ったら、案の定むっとしてた
……可愛いな、とは思った
さっき、僕のほうにちょっと寄ってきてたしね
本人は気づいてなかったみたいだけど
普段は人に頼らないんだから、怖いときくらい頼ればいい
僕だって、呼ばれたら行くし
……いや
たぶん、呼ばれなくても行くけど
「怖くなったら、いつでも呼んで?」
そう言ったときの紅海の顔を思い出す
『……悟』
「ん?」
『……ありがとう』
真っ赤になって…ずいぶん素直だった
一瞬、何も言えなくなった
こういうの、ずるいんだよな
だから誤魔化すみたいに
「はいはい」
って手を振った
別に、大したことじゃない
幽霊が怖いなら、僕を呼べばいい
ただ、それだけ
…まあ紅海が僕を頼ってくれるっていうのは、悪くない
むしろ、結構好きかもしれない
そんなことを本人に言ったら、また「悟はすぐそういうこと言う」って困った顔をするだろうから言わないけど
もし夜中に、本当に怖くなって
「悟いる?」
って呼ばれたら
たぶん僕は、普通に部屋から出ていく
眠いとか、面倒とか言いながら
「なに。幽霊でも出た?」
なんて笑って
紅海が安心するなら、それでいい
僕がいることで、少しでも怖くなくなるなら悪くない
紅海が僕を頼るのが“最強”だから、じゃなくて“僕”だからなら…
…まあ、そこまで都合よく考えるほど、馬鹿じゃないけど
紅海は誰にでも優しいし心を許す
だから、五条悟が、勝手に頼られたら良いなぁって空想