第42章 影と幽霊
「呪霊は?」
『平気』
「幽霊は?」
『無理』
「その違い何?」
『全然違うよ』
「僕には分かんないけど」
『悟には分からないよ』
紅海は少しだけ口を尖らせる
毎回、幽霊ネタが出たら、儀式のように一通り聞いてしまう
そして五条は笑った
「はいはい」
そのまま、二人で歩き始める
紅海はさっきより少しだけ歩く速度を落とした
五条も何も言わず、それに合わせる
しばらくして
――ガサッ茂みが揺れた
『……っ』
紅海の足が止まる
喉の奥で小さく息を呑んだ。
五条が横を見る
「……何?」
『な、何でも……』
そう言いながら
紅海の身体が、無意識にほんの少し五条の方へ寄っている
五条は気付いたが特に何も言わない
もう一度、茂みが揺れる
――カサッ
『……!!』
紅海が、五条の腕の近くまで寄った
そして小さな声で
『ね……猫かな』
「猫じゃない?」
『……だよね』
「たぶん」
『たぶん……?』
「何?確認してこようか?」
『……いい』
「ははっ、じゃ、帰ろ?」
五条が先に歩き出す
紅海も続く…しかし数歩進んだところで
五条が振り返り何でもないように言った
「手、繋いであげよっか?」
『い、いいよ!子供じゃないんだから!』
紅海が即答した
「そう?」
慌てて一歩、五条から離れる紅海
その勢いがあまりに分かりやすくて、五条は吹き出した
「別に減るもんじゃないのに」
『そういう問題じゃないよ!』
「じゃあ、何の問題?」
『……』
答えられない
紅海は少し赤くなった顔を隠すように前を向いた
『……もう、悟の意地悪』
「はいはい」
五条は笑いながら歩く
宿舎の明かりが近づいて敷居を跨ぐと
紅海の表情が緩んだ
五条はそれを横目で見て、相変わらず分かりやすいと思って少しだけ口元を緩める
そして何事もなかったように
「ねえ紅海、さっきの怪談、どんな話だったの?」
『え……聞きたい?』
「うん」
『……絶対、聞かない方がいいよ』
「じゃあ聞かせて」
『何で!?』
宿舎の灯りの下へ、二人の影が並んで伸びていった