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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第41章 事務と信頼


その様子を見て、紅海は小さく笑う

『ゆっくり食べてね』
「……はい」

そんな、何でもない午後だった
伊地知はサンドイッチを包んでいた紙を畳み、それを脇へ置く

「あ」
何かを思い出したように声を漏らす

『ん?』
「そういえば」

眼鏡の位置を直す
「一つ、報告しておいた方がいいことがありました」

紅海が書類から顔を上げる

「先日の、京都での事件の件です」
その言葉に紅海の手が止まった

「……保田さんのことなんですが」

一瞬、事務室の空気が変わる

京都

広範囲の二重の帳に非術師たちが閉じ込められた事件
その事件の実行犯の一人

そして紅海と対峙した男だ

魂を弄られ…人間のものとは思えない腕が暴走する
紅海は領域を展開し、その力で、どうにか状態を押し留めた

…が、治療の結果
腕は切断するしかなかった

『……うん』
紅海は静かに返事をした

伊地知は少しだけ言葉を選ぶように間を置いた
「以前、メカ丸君経由で流鏑馬さんから頂いた名刺がありましたよね?」

『……傀儡師の?』

「はい」
伊地知が頷く

あの時、メカ丸が呪力で動かすことが出きる義手を提案をしてくれたのだ


「その方と、連絡がついたようで、どうやら、保田さんは義手を作ってもらうことになったそうです」

『……』
紅海の目が、少しだけ開く

「彼が今後、どのような処遇を受けるのかは……まだ私にも分かりません…
事件を起こしたことに変わりはありませんし、それについては然るべき判断が下されると思います」

『……うん』
「ですが」

伊地知は紅海を見る
「ひとまず、それだけ報告しておこうと思いまして」

紅海は、しばらく何も言わなかった
机の上に置かれた自分の手を見る

指先が、ほんの少しだけ緩む

『……そう、ありがとう』

それだけ言って
小さく息を吐いた
『よかった』

伊地知が瞬きをする
「……はい?」
『……義手、作ってもらうんだね』

「ええ」
『そっか…』

紅海は俯いた
胸の奥にあった何かが、ほんの少しだけ解けていく
もちろん保田が犯したことは許されることではない

あの腕に襲われ自分の領域で押さえ込んだ時の感触も
腕を失わなければならなかったという事実も

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