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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第41章 事務と信頼



午後の事務室

窓から差し込む光が少しずつ傾き、机の上の書類を白く照らしている

紅海は、最後の一枚に目を通した
伊地知が出ていってから、随分経つ
そろそろ戻ってくる頃だろう

別に、待つ必要なんてないが可愛い後輩だ労ってあげなくちゃ
そう思いながら、紅海は席で書類をペラペラめくる

やがて廊下から、聞き慣れた足音が近づいてくる
扉が開いた
「ただいま戻りました……」
疲れの滲んだ声が聞こえる

『イッチー、お帰り』
紅海が顔を上げる
伊地知は少し驚いたように瞬きをした

「……まだいらしたんですか?」
『うん、イッチーが帰ってくるまでに、これ片付けようと思って』

「そんな、待っていてくださらなくても……」
『あ、そうだ』
紅海が机の横に置いていた小さな袋を取り出した

『お昼、食べた?』
「え?」

『これ…売店で買ってきたの』
差し出されたのは、サンドイッチとサーバーに入ったコーヒーだった

「……」
伊地知が固まる

『食べてないでしょ?』
「……どうして分かったんですか」

『顔に書いてある』
クスクスと笑いながら、カップにコーヒーを注ぐ

「そんな馬鹿な……」
伊地知が苦笑する

けれど、疲労は隠しきれていなかった
「……いただいても良いんですか?」
『もちろん』

「ありがとうございます」
両手で受け取る

その仕草は、丁寧な仕事をする、いかにも伊地知らしい
紅海はそんな伊地知を見ながら、ふと思う


伊地知は、派手さはないが仕事ができる
五条のように圧倒的な存在感があるわけでもない


けれど、状況を見て、必要なことを考えて、無理のないところで最善を選ぶ

任務でも、事務仕事でも
誰かが見落としたところを拾ってくれる

以前、遊佐が伊地知の仕事ぶりを褒めていたことも思い出す
「あの人は、補助監督として本当に優秀ですよ」
そう言っていた


伊地知は、サンドイッチを食べながら、ふと紅海を見た

「…流鏑馬さんは、五条さんのことを、よく分かっていらっしゃいますよね」

紅海は少しだけ目を丸くした
それから、困ったように笑う
『んー……そうかなぁ』
「はい」

伊地知の返事は迷いがなかった
紅海は手元の書類へ視線を落とす
しばらく、ペン先を紙の上で転がしていた

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