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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第41章 事務と信頼



一方、事務室では
紅海が一人、書類に向かっている

さっきの電話を思い出して、少しだけ笑った
悟は伊地知に対して、あまり優しくない
でも、雑に扱えるということは
それだけ、伊地知なら大丈夫だと思っているということでもある


五条悟は、人との距離を測るのが上手いのか、下手なのか
紅海には時々分からなくなる
ただ…五条が、伊地知のことを気に入っているのは知っている

そして、信頼している
だから、さっきの紅海の言葉は冗談ではない
『……頑張ってね、イッチー』
誰もいない事務室で、紅海は小さく呟いた
そして再び、書類へ視線を落とした

イッチー…
この愛称は、紅海しか呼んでいない…多分

時は十数年前に遡る

伊地知潔高が呪術高専へ入学したばかりの頃
まだ制服にも身体が馴染んでいないような時期だった

術師としてやっていけるのか
自分でも、まだよく分かっていなかった

それでも、真面目に術師として学んでいた
その日の任務で組んだのが、二つ上の先輩――流鏑馬紅海だった
「伊地知と言います」

少し緊張した声で名乗る
紅海は、ぱちりと瞬きをしてから、ふわりと笑った

『うん、よろしくね、イチジ君』
「はい!」

その時の伊地知は、訂正しなかった
緊張していたから、特に気にも止めず彼女に付いていく

それに、まさか名前を聞き間違えられているなどとは思いもせず
その日の任務は、紅海がほとんど片付けてしまった

伊地知も何度か術力を使おうとしたが、実戦経験の差は明らかだった
呪霊が消えたあと、紅海は周囲を確認してから、伊地知へ振り返った

『イチジ君、呪具を借りてもらった方が合ってるのかも』
「呪具、ですか?」

『うん…術力だけで無理に戦うより、近距離ならそっちの方が安定すると思う』

押し付ける言い方ではない
ただ、ちゃんと見てくれている

『術師って、発想力も必要だと思うんだよね、色々試してみて戦い方を決めていいからね』
「……はい」

その言葉が、妙に嬉しかった
それから、紅海と同じ任務に出ることが増えた
紅海は強かった…それなのに、それを鼻に掛けない

伊地知が失敗すれば怒るより先に助け、うまくいけば自分のことのように喜ぶ
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