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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第40章 母と姉


══閑話══
東京校の医務室
「納得がいきません」
硝子はカルテから顔を上げることなく七海の声に耳を傾けた
「何が?」

「流鏑馬さんの外出です」
「ああ」
硝子は淡々と答える
「プライベートの外出は、五条付きか一級術師の監視が必要って決まってるだろ」
「それは理解しています」
七海は眼鏡を押し上げる

「ですが…あの人との、イレギュラーな一泊が多くないですか」
硝子の手が止まった

「…妬いてんのか」
「別に…」
即答だった

窓の外から生徒たちの声が聞こえてくる
しばらくして、硝子がぽつりと言った

「まあ、いいんじゃない?」
「…何がです」
「今回は、やむを得ない一泊だよ」
硝子はようやくカルテから視線を外した

「紅海の母親の霊祭…紅海だって泊まりたいだろうし
監視下に置かれている以上、付き添いが必要なのも事実」

「それは分かっています」

硝子は目を伏せる
「それに五条は、私情を出したわけじゃない」
「……」
「少なくとも、今のところはね」
逆に難癖付けた自分が、私情を出してるのだろうか…と、七海が黙る

硝子は、少しだけ面白そうに口元を緩めた
「アイツに、紅海とどうこうなりたいって覚悟、まだないよ」

「…最強が?」
「そう、最強が」
妙なところで、二人の声が、わずかに重なった

七海が微妙な顔をする
硝子はカルテをデスクに置く
「五条って、欲しいものを欲しいって言うタイプじゃないだろ」
「…意外ですね」
「そう?」

「もっと、そういうことには遠慮がない人間かと」
「それはまあ…自分が欲しいだけなら、たぶん遠慮しないよ…努力せずに手に入れられた事がほとんどだろうし」

「では?」
「紅海がどう思ってるか分かんないから、動かないんじゃない?」
七海は黙った…妙に納得できる
五条悟という男は、自分の強さについては一切疑わないが
他人の気持ちまで、自分の思い通りになるとは思っていない
だから、妙に慎重なのかもしれない

紅海と五条が二人で過ごした事実は変わらない
それを思うと、胸の奥に小さな苛立ちが生まれる
「まあ、今回は仕方ないでしょう」

硝子はニヤリと笑った
「やっぱ妬いてんじゃん」
「違います」
「はいはい、そう言う事にしておこう」
「本当に違います」
七海は深いため息をついた
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