第40章 母と姉
『……』
紅海が小さくなる
「縁側で寝るわ、人に運ばれても気づかないわ
男が夜中に部屋に入って来ても平気なのかい?」
「……」
『おばあちゃん、平気かどうかと言えば…ちょっと違うよ』
「何が違うんだい」
『男じゃなくて、悟が入ってくるのは大丈夫だもん…』
浅葱だけが
「……ほう…なるほどねぇ」
と、妙に意味深な声を出した。
紅海の耳まで赤くなる
『ん?あ、いや、違うの!』
紅海が慌てて両手を振る
『そういう意味じゃなくて!』
「どういう意味?」
五条が面白そうに聞く
『もー、悟は部屋に入ってもOKって事じゃないよ!』
「何?」
『絶対わざとでしょ!』
「何が?」
『もう!悟なら入ってきても信用してるって意味!』
頬を膨らませる紅海
五条は笑った…と、同時に浅葱も、とうとう吹き出す
「ははは!紅海は本当に…逆に、もう少し男に免疫があっても良いのかもしれないね」
『お祖母ちゃん!』
浅葱が笑いながら
今度は少し真面目な声になる
「でもね、無防備なのは、本当に気をつけなさい」
『……うん』
「五条さんを信用してるっていうのも解るけど…それは理由にはならないからね」
『……はーい』
紅海はちらりと五条を見る
五条は肩を竦めた
「浅葱さんは、僕を信用してくれてるのか、してないのか分かんないな」
浅葱は即答する
「信用はしてるよ、ただね釘を刺してるんだよ」
「なるほどね」
五条は笑った
それから、ちらりと紅海を見る
紅海はまだ少し恥ずかしそうにしながら朝食の準備を続けた
昨夜の涙は嘘のようだ
「紅海」
『ん?』
「今日は帰ったら、ちゃんと寝なよ」
『分かってるよぉ』
「縁側で寝落ちも禁止ね?」
『もぉ!縁側無いでしょ!』
浅葱はそんな二人を見ながら、ため息を付く
「……まあ…仲が良いのは、いいことだけどねぇ…まったく、あんた達はいくつだよ」
『おばあちゃん…余計なこと言わないで』
「はいはい」
紅海がまた頬を膨らませる
そんな、いつもの朝
何も知らない顔で笑っている紅海
また一人で泣くような夜が有れば
今度はもう少し早く気づいてやろう
いつもの笑顔の裏側で、五条は静かに考えていた…