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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第40章 母と姉




ただ、寒かったのか
掛けられた上着の中へ、少しだけ身体を縮める

「……」
五条はふっと笑う

「そうそう…そうやって大人しく寝てればいいんだよ」

返事はない
五条は、もう一度しゃがみ込む

紅海の頬にかかった髪を、そっと耳へ掛けてやる

その時
紅海の唇が、ほんの少し動いた

「……悟……?」

五条の手が止まる

けれど…それだけだった
一瞬起きて寝ぼけたのか
夢を見ているのか

何を意味しているのかも分からない
五条は少しだけ紅海を見つめた

そして
「……寝言?」

いつもの調子で笑う
「夢の中で、僕の事頼ってくれてんの?」

もちろん返事はない
五条は肩を竦めた

けれど、その顔は、ほんの少しだけ嬉しそうだった

「……まあ、いいけど」
五条は紅海の背中に手を回し
身体を抱き上げる

「しょ……っと」

五条は紅海の方を、チラッと見る
近い

けれど、今は、それ以上考えない事にする

腕の中にいるのは
自分が好意を寄せる女だ

「無防備すぎ」
余計なことは考えない

寒い場所で眠っているから
部屋まで運ぶだけ

紅海の頭が、歩くたびに僅かに揺れる
五条は寝やすいように自然に腕の位置を変える

紅海の部屋の前に着き襖を開け
布団へ、そっと下ろす

紅海は静かに眠っている

布団を掛け、少し腫れた瞼を見る

「……」
五条は、しばらく黙って見つめていた

どれだけ一人で抱えたのか
なにを考えて泣いていたのか…

「……明日には、また笑うんだろうな」



紅海は、きっと何事もなかった顔で起きてくる
いつもの笑顔で…多分

「……嘘つき」
責める声ではない

むしろ、困ったような声だった
「まあ、いいけどさ」

部屋を出て襖を閉める直前
もう一度だけ振り返る
布団の中で眠る紅海

今度は一人で縁側にいた時より、ずっと穏やかな顔をしている

それを確認して
五条はようやく襖を閉めた


しばらく歩いてから
五条は小さく息を吐く

「…一人で泣くなよ、ほんと」

それから少しだけ
いつもの調子に戻った声で

「明日、笑ってても……まあ、見なかったことにしてあげる」

足を止め空を見上げる…月明かりが廊下へ差し込んでいた

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