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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第40章 母と姉


夜は、いつの間にか深くなっていた

五条は部屋の襖を開ける
寝付けないのでそとの空気でも吸おうかと廊下へ出る
昼間は賑やかだった神社も、今はすっかり静まり返っている

障子の向こうから、かすかな虫の声
古い木の廊下を踏む足音だけが、妙に大きく響く

ふと、五条の視線が庭へ向いた

「……ん?」

月明かりの中
縁側に、人影…まさかと思ったが

「紅海?」

近づいてみるが、返事はない

縁側の隅で、膝を抱えたまま眠っていた
身体を小さく丸めて、頬を膝に預けている

風が吹くたび、髪がさらさらと揺れる

「はぁ……何してんの」

小さく呟いても、起きない
五条はしゃがみ込んだ

寝顔を覗くと
いつもなら、どこか柔らかく笑っているような顔をしているのに
今日は眉間に、ほんの少しだけ皺が残っている

そして…
頬に残ったものに気づく

涙の跡

何度も拭ったのか
目元は少し腫れていた

「……」
五条の顔から、いつもの軽い笑みが消える

泣いてた?
千草と話していた時のことが、頭に浮かぶ
紅海にとって、きっと簡単に笑って済ませられる話ではない

「……そっか」

起こす気にはなれない。

今ここで涙の理由を聞いても、心配させないように
きっと紅海は、いつものように、へにゃっと笑う

『何でもないよ』
そう言うだろう

「……ほんと、そういうとこだよね」
呆れたように呟く
その声は優しかった。

「人のことばっか気にかけて、自分のことは後回し」

返事はない
五条は、眠った紅海の顔を見つめる

いつも、誰かが困っていれば助ける
誰かが傷ついていれば寄り添う
誰かが寂しそうにしていれば、何でもない顔で隣に座る

なのに、自分が寂しい時は
一人になる…

「……一人で泣くなよ」

小さく言う
聞こえるはずもない

それでも
言わずにはいられなかった

五条は立ち上がった
「風邪ひくだろ」

自分の上着を脱いで紅海の肩へ掛ける

その瞬間
紅海の身体が、かすかに揺れた

「……ん」
小さな声

五条は手を止める
けれど、紅海は目を覚まさない
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