第40章 母と姉
紅海は俯いた
『……でも、叔父さんは辛いんだよ…だから…「分かるけど、紅海が悪いって事とイコールではない」
被せた、その言葉は、慰めや優しいというよりも
淡々としていて…
だからこそ、紅海は返す言葉を失った
言いすぎたか?でも、きっぱり否定しないと紅海は自分を責め続ける
こうやって、言っても幼い頃から投げられた言葉は根深い
だから、少しずつ剥がしていってやらないと…
『良い意味で!ね?』
五条は再び歩き出す
「ほら行こう?」
『……うん』
紅海も後を追う
二人の歩幅が、また並ぶ
しばらくして五条が、紅海ぶんの買い物袋を手から取り上げた
『え?』
「持つ」
『でも――』
「僕の方が腕長いし」
『それ、理由になってないよ~』
「なってる」
『ならないよぉ。』
いつもの2人の調子
紅海が少しだけ笑う
その横顔を見ながら、五条は何も言わなかった
今日知った事が多すぎた
そして、紅海自身が長い間抱えてきたらしい「自分が誰かを不幸にする」という考え
紅海は、自分が傷つくことを「仕方ない」と思いすぎる
五条は隣を歩く紅海を横目で見る
本人はもう、夕飯の話をしている
『ねぇ悟、お昼のちらし寿司残ってたら食べる?』
「食べる」
『私も食べようかなぁ』
「うん」
いつも通りの紅海…
その「いつも通り」が、今日は少しだけ違って見えた
くすりと笑う紅海はいつも通りだ
五条も笑って返す
けれど…ふと、さっきの横顔が脳裏に浮かんだ
自分の両親のことを話していた時
声を荒げるでもなく、泣くでもなく
ただ、ひどく静かだった
夕暮れの中で見た横顔が、妙に薄く見えた
まるで少し目を離したら、そのまま風景の中へ溶けてしまいそうな――
そんな、馬鹿げた考えが浮かぶ
五条は眉を寄せた
らしくないと自分でも分かる
こんな根拠のない不安を抱くなんて
最強だなんだと呼ばれて
死ぬほど面倒なものをいくつも見てきた