第40章 母と姉
『……叔父さんの話で、なんとなく気付いてるかなって思ったんだけどね』
五条は黙って聞く
『私、小さい頃から……呪力量が多すぎたみたいで
そのせいで、普通の人より呪霊に襲われやすかったんだって
お母さんも、お父さんも……私を庇って亡くなった』
歩く速度が、ほんの少しだけ落ちた
紅海は続ける
『お祖母ちゃんは、それだけじゃないって言ってた
2人が亡くなった時、私の呪力が膨れ上がったんだって
……大切な人を失った代償に、その人の呪力を何倍にもして、自分のものにするんじゃないかって…特殊な天与呪縛?』
紅海は自分の手を見た
『だから……お母さんの呪力も、お父さんの呪力も、私の中にある…多分
…怖いよね両親が死んだことで、自分が強くなってる』
「怖くない…」
五条が即座に言った
紅海が顔を上げる
五条は前を向いたままだった
「少なくとも、君が望んで選んだことじゃないんだろ?」
『そりゃ、そうだよ』
紅海は小さく息を吐いた
『でもね、私より、叔父さんやお祖母ちゃんの方が
お母さんと一緒に過ごした時間が長いんだもん…
お母さんのこと、大好きだったのも知ってる
だから……』
少しだけ声が掠れる
『私が恨まれるのは当たり前だよ…』
五条の足が止まった
紅海も、数歩進んでから気付いて振り返る
『……悟?』
紅海はハッとして
『ごっ、ごめん!暗い話しちゃって、何でこんな話しちゃったんだろ…ほんと、ごめん!』
五条は黙って紅海を見る
紅海が五条を見上げる
夕暮れの光が、白い髪の輪郭を薄く縁取っていた
「それさ、誰が決めたの?」
『え?』
「恨まれて当たり前って」
紅海は答えられない
「君が?」
『……』
心が抉られる感覚
「それとも叔父さんが?」
『……分かんない』
「じゃあ、決まりじゃない」
あまりにもあっさり言われて、紅海は瞬きをした
「千草さんが、紅海のお母さんの事を大事にしてた事は分かった
だから、紅海を見ると辛いのも分かった」
五条は肩をすくめる
「でもさ、辛いからって、
君に暴言吐いて傷つけていい理由にはならないでしょ?
それとこれとは別だよ」