第40章 母と姉
スーパーを出る頃には、空はすっかり夕暮れの色になっていた
買い物袋を提げて、二人は並んで神社への道を歩いている
秋の風が、昼間より少し冷たい
五条の手にはスーパーの袋
紅海に選ばせた菓子から始まり、泊まるための日用品が入っている
『……なんか、不思議だね』
「何が?」
背の高い五条を見上げる
歩幅は、五条が合わせてくれている
『こうやって、悟と並んで歩いてるの』
「今さら?たまに、こうしてあるいてるでしょ?」
『うん』
紅海は少し笑った
『高専卒業して、私が京都に行って……東京に戻ってきた時も
まさか、こんな風になるとは思わなかったなぁって…』
「僕も…こんな面倒なことになるとは思わなかった」
五条は前を向いたまま答えた
『面倒って……』
「良い意味でね?」
紅海が京都から帰ってきて、色々合った…
紅海と一緒に過ごして話すたびに、
彼女の事が、やっぱり好きだったんだと認める事が出来たし…
知らなかった紅海の一面が分かりはじめて、心配になったり、妬いたり、怒ったり…逆に楽しかったこともあったし…
自分の判断が間違えて本気で嫌われたかもって思うことも何度か有った
本当に振り回されてばっか
「こんなに、僕を振り回すのは紅海くらいだよ」
『え~!?私、そんな面倒なくらい振り回してる?』
「良い意味で…」
軽い返事だった
けれど、その声に嫌味はない
『良い意味でって付ければ、良く聞こえるとか無いからね~?』
五条は爆笑する
紅海もつられて笑う
それから少し黙って歩いた
しばらくして、ふと思い出したように口を開く
『ねぇ、悟』
「ん?」
『前にさ……一緒に飲みに行った時…暗くなるから、やっぱり今日は言わないって言ったことあったと思うんだけど……』
五条が横を見る
『あ、ごめん、覚えてないよね?』
一緒に飲みに行った事は、結構ある…五条は少し考えて
「いや…なんとなく覚えてる」
『ほんと?』
「うん」
『……そっか』
紅海は少しだけ安心したように笑った
けれど、その先を言うまでには、少し時間がかかった