第40章 母と姉
「ほらほら、紅海はお見合いしたのに、ダメだったんだもんね?」
紅海が困ったように五条を見る
『変なこと言わないでよ!8割本当だけど…』
「当たってんじゃん」
千草は前を向いたまま、そのやり取りを聞いていた
二人とも、妙に自然だった
五条は遠慮がない
紅海は困っているくせに、本気で嫌がってはいない
むしろ、五条の軽口を聞き慣れているんだろう
長い付き合いなのだということは、こういうところで分かる
「……君たちは」
千草がぽつりと言った
『ん?』
「いや…随分、仲が良いんだな」
紅海が少しだけ目を丸くする
『そうかな?』
「そうでしょ?同期だしね?」
いつもの軽い笑顔で五条は言う
千草はバックミラー越しに二人を見る
紅海は少し照れたように笑っている
その表情を見て、千草は何も言わなかった
ただ
紅海が、誰かと素直に笑っていることを
自分は知らなかったのだと、ふと思った
バックミラーに、後部座席の二人が映る
紅海は窓の外を眺めている
五条はそんな紅海を横目で見ていた