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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第40章 母と姉



「それなら千草に乗せてってもらいな」
『え?』
「ちょうど帰る頃だろ」

視線の先では、千草がタイミング良く部屋に入ってくる

「母さん、私はもう帰るよ」
「ああ、そうかい」

浅葱は頷いたあと、何でもない顔で続けた
「じゃあ、紅海たちを乗せていきな」

「…え?」
千草の納得のいかない顔
「何で?」
「何でって」
浅葱は首を傾げた

「あそこのスーパー、あんたの帰り道だろ?
紅海達が急に泊まる事になったからさ、買い出しにね?」
「……」
「少しくらい寄ったっていいじゃないか」
千草は何か言おうとして、やめた

確かに帰り道だ
わざわざ遠回りになるわけでもない
「…それは、そうですが」
「じゃ、決まり」

「いや、私はこれから――」
「はいはい」

浅葱は聞いていない
「そんなだから結婚も出来ないんなよ」
「……」
そんな事、関係ないではないか?と心の中で、千草は思う

「うちの子たちは本当に揃いも揃って、いい歳して独身ばっかりで」
紅海にも飛び火した

千草の口が僅かに開く
「母さん、今その話は――」
「浮いた話の一つくらい持ってきなさいよ」
「……」
「親としてはね、あんたの子供の顔くらい見たいんだよ」
千草は黙った

反論はいくらでもできるし

別に、ずっと女性と縁がなかったわけではない
結婚という制度そのものに、さほどメリットを感じなかっただけだ

仕事もあるし生活も安定している
誰かと家庭を持たなければならない理由も、これまで特に感じなかった

―そう説明したところで
母親相手に言ったところで
どうせ
「屁理屈言ってないで、いい人はいないのかい」
で終わる

千草はゆっくり息を吐いた
「…分かりました」
「そうしな」
浅葱は満足そうに笑う

紅海は申し訳なさそうに千草を見る
『叔父さん、ごめん…無理なら―』
「別に」
千草は紅海の言葉を遮った
「帰り道だからな」

五条が隣で、肩を揺らしている
「……何ですか」
「いや」
五条は口元を隠すように笑った

「おばあちゃん、強いなぁって」
「……」
千草は五条を一瞥した
五条は楽しそうに笑い

「じゃ、よろしく…とりあえず、安全運転でね?」
「なんで、君に指示されないといけないんだ」
「だって僕、お客さんだよ?」
「……」
千草はもう何も言わなかった
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