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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第40章 母と姉


五条は肩をすくめて続けた
「まあ、紅海に頼まれたから来たわけじゃないけどね」

「では?」
「僕が紅海と来たかったから」

千草の眉が僅かに動く
「……随分と親しいようだ」

「まあね」
五条は軽く笑い、鋭い目線に変わった
「叔父さんさ、紅海に酷いことばっか言ってると、嫌われちゃうよ?」

千草の表情が固まる
「……余計なお世話です…あなたに何が分かる」

「何も分かんないよ」
五条はあっさり認めた
「今日、叔父さんの存在を知ったくらいだし」

「なら、口を挟まないでほしい」

「でも」

間をためる…

静寂

「モテないでしょ? そういう言い方」

「……は!?」

千草の眉間に、初めて明確な皺が寄った
「女性に好かれるために、姪を甘やかす必要があると?」

「いや、そういう意味じゃないけど」
五条は楽しそうに肩を揺らす
「単純に、嫌われるようなことばっかしてたら、叔父さんにとっても損でしょ?」




千草は五条を真っ直ぐ見た
「あなたは、紅海のことも知らずに、随分と分かったような口を利く」

五条の笑みが、ほんの少しだけ薄くなった
「そうだね……だから気になるんだろ?
紅海が何で、そんな風に言われるのか
紅海が、どんな風に育ってきたのか」

千草は答えられなかった
自分だって、紅海のことを知っているわけではない

年に一度ほど、姉の命日に顔を合わせるだけ
そのたびに、自分が投げつけた言葉に、紅海は困ったように笑って

そして、謝る

それしか知らない

紅海が普段、どんな顔をしているのか
誰と笑い、誰を頼り、どんなふうに生きているのか
何も知らない

むしろ――
目の前の男の方が、紅海のことを知っている
そう思ってしまった

千草は視線を落とす
紅海を見ると、姉を思い出す
姉が帰ってくるわけでもないのは分かっている
それでも、姉によく似た目をした姪を前にすると、胸の奥にしまったものが勝手に疼く

だから厳しくなる
だから、言わなくていいことまで、ぶつけてしまう
紅海が自分を嫌っていることくらい、分かっている

――いや
嫌われて当然だ

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