第37章 都と帳
遊佐は続ける
「呪霊は一級未満が中心です…せやけど数が多い」
「それに、妙や」
五条が助手席から口を挟む
「妙?」
「最初に確認した時より、強なってる気ぃする」
遊佐は短く答えた
「原因はまだ分かりません…現場も解析中です」
車内へ短い沈黙が落ちる
紅海は地図から目を離さない
帳の位置や避難経路
救助区域…頭の中で、一つずつ覚えていく
やがて小さく息を吐いた
『……急がないと…』
車はゆっくりと京都駅を離れ、騒然とした市街地の奥へ向かって走り出した
しばらくして、遊佐の車は規制線を抜け、臨時の現地指揮所へ滑り込んだ
観光バス用の駐車場
普段なら大型バスが並ぶ場所には、救急車や警察車両、補助監督の車が慌ただしく出入りしている
無線の音が絶え間なく飛び交い、遠くでは建物が崩れる鈍い音が響いていた
「遊佐さん!」
若い補助監督が駆け寄る
「お疲れさまです!」
「状況は変わらへん?」
「はい…避難誘導は継続中です」
遊佐は短く頷く
「分かりました」
その横で、伊地知はすぐに折り畳み式の机へ向かい、広げられていた京都市街の地図を見下ろした
赤いマーカーで描かれた二重の帳に、青い印が三つ記されている
伊地知は眼鏡を押し上げ、小さく息を吐いた
「なるほど……」
誰へ向けるでもない呟きだった
「非術師は、このドーナツ状の範囲しか移動できない……厄介ですね」
静かに地図を見つめる
遊佐が隣へ立った
「青い印が、退避場所です…今は三か所」
伊地知は地図を見比べる
頭の中で避難経路を組み立てていく
数秒後、頷いた
「術師の人数を考えれば妥当ですね」
その言葉に、その場にいた補助監督たちの肩から僅かに力が抜ける
伊地知は続けた
「では、東京から到着した術師は退避拠点へ向かいます
京都所属の術師の皆さんは、土地勘がありますので避難誘導と現場対応を、そのまま継続してください…拠点の守りは、こちらで引き継ぎます」