第37章 都と帳
監視措置が決まって、その後に京都からの応援要請
しかも、条件を並べれば自然と紅海へ行き着く内容
非術師を救うための例外運用…
そう片付けることもできるが…
だが……出来過ぎてる
紅海の中には、巫女の魂が眠っている
あの一件を知る者は限られているが
もちろん、上層部は知っている…
誰かが意図的に紅海を動かそうとしているのだとしたら
考え過ぎなら、それでいい
だが、胸の奥に残る小さな違和感だけは消えなかった
夜蛾が静かに問う
「悟…どう思う」
五条は窓から視線を外し、肩をすくめた
「行かせるしかないでしょ…
後々、紅海を何で行かせなかったんだって
つつかれて、紅海にとって不利になるのも面倒だしね」
その声は普段と変わらない
「京都を知ってる一級術師…条件には一番合ってるし…本人も、任務を断るタイプじゃない」
夜蛾は黙って聞いている
五条は続けた
「だから僕も行く」
伊地知が頷く
「今回、監視役として、妥当ですね…と言うか…五条さんだけで片付くのでは…」
「ま、そういうこと、意見も聞きつつ…僕が同行すれば事件も解決、総監部も文句ないでしょ」
夜蛾は短く息を吐いた
「伊地知…お前も同行してくれ」
「はい、了解しました」
伊地知はすぐに部屋を出ていく
扉が閉まり、他の術師も準備をしに行く
会議室には夜蛾と五条だけが残った
夜蛾は五条を見た
「勘か?」
五条は少しだけ笑う
「さあ…考え過ぎかもしれないし…まぁ、用心は越したこと無いって言うからね」
夜蛾はその言葉を否定しなかった
「流鏑馬を頼む」
その思いは、学長の立場からではなかった…
きっと尊敬する先輩の大切な忘れ形見だから
そして、自分も娘の様でも有るから
五条は扉へ向かって歩きだす
「言われなくても…」
その返事だけを残し、静かに会議室を後にした
廊下へ出ると、窓から吹き込む秋風が白い髪を揺らした
高く澄んだ青空を見上げながら、五条は心の中だけで呟く
ま、何もなければ、それで…ね