第37章 都と帳
「範囲は?」
「まだ、正確に把握できてません…現在、補助監督数人が広域に帳を展開して、非術師の視線、侵入を極力止めています」
「……せやな、それが正解かもしれん」
遊佐は頷き、スマホを取り出し電話をかけながら
周りの人間に指示をする
「警察と消防へ…理由はガス漏れ事故対応で構ん、一般人をこれ以上近付けたらあかんで」
現場が一斉に動き始める
帳の奥は、不自然なほど静かだった
遊佐が一歩踏み込む
補助監督数名と術師が続く
その瞬間…轟音が響いた
建物の外壁が内側から砕け散る
黒い影
一体
二体
三体――
次の瞬間には数十体もの呪霊が街へ溢れ出した
悲鳴が上がる
観光客が逃げ惑う
幼い子どもが何もない空を指差し、泣き叫ぶ
「ママ……なんかいる……!」
ほんの少し呪力の強い者だけが、黒い輪郭を捉えていた
見えない人間は、他の人間のざわめきと、建物の崩壊に悲鳴を上げる
「これは……」
遊佐が周りを確認し声が鋭く飛ぶ
「皆、聞いてくれ!散ったらあかん!」
術師達の足が止まる
「一般人、守る方が最優先や!非術師は外に出れへんのやから
術師が一旦固まって、安全地帯を先に作る!
そこに避難誘導や」
一体の呪霊が商店へ突っ込む
ガラスが砕け、悲鳴が連鎖する
遊佐は即座に通信機を握り直した
「京都校だけやと人数が足りへん…東京へも応援要請しといた方がええ」
その言葉が、京都の長い1日の始まりとなる
══東京
木々は、まだ青さを残しながらも、ところどころ葉先を色付かせ始めていた
穏やかな風が校舎の窓を揺らす
その静けさを破るように、会議室の扉が開いた
「失礼します」
伊地知潔高が足早に入室する
手には数枚の報告書だ
表情は普段以上に硬かった
部屋には既に夜蛾正道が座っていて、高専を拠点としている
数人の呪術師が集まっている
「京都から、詳しい報告書が届きました」
伊地知は机へ資料を広げた
京都市街の地図
赤い線で囲われた広範囲
その上へ、二重の円が重なるように描かれている