第37章 都と帳
真依がと桃も寮の方から登校する
三輪の頭上を、箒に乗った西宮桃がふわりと横切った
「真依ちゃん、先いくよ?」
「桃、呪力飛ばしすぎ…今日、あなた任務だったでしょ?」
「このくらい、大丈夫……ん?」
西宮は口を尖らせながら高度を下げる
「……あれ?何か帳っぽいの見えた気がしたんだけど…気のせいかな」
「見間違えじゃなくて?」
「んー…遠すぎて、確信は持てないけど…」
「…何か有ればお呼びが掛かるわよ」
真依が肩をすくめる
少し離れた場所では、東堂が丸太へ拳を打ち込み続けていた
鈍い衝撃音が一定の間隔で響く
その横を三輪がその横を通りすぎる
「東堂先輩、おはようございます」
「三輪」
東堂は拳を止めない
「今日の朝練は終了か?」
「はい、遅刻は内申点に響くので!」
「真面目だな」
一方、その横をするりと通り、校舎の廊下で遊佐が事務室へ向かっていた
補助監督としての一日は早い
今日も普段と変わらない朝――そのはずだった
生徒達の笑顔を見届け、遊佐は事務室の扉へ手を掛けた
その時だった
ポケットの携帯電話が震える
着信音が静かな室内へ響いた
画面を見る
京都補助監督…同僚と言うやつだ
遊佐はすぐ電話へ出る
「はい、遊佐です」
数秒…遊佐の表情から笑みが消えた
「……は?何それ……
今は、まだ何も起きとらんのやな?」
返事を聞く
「……分かった、そっち向かうわ」
電話を切る
戻ってくる遊佐の真剣な顔を見て
三輪が不安そうに見つめていた
「遊佐さん?」
「悪い現場行ってくる」
遊佐は歩きながら短く答える
「何かあったんですか?」
「まだ分からへん」
その一言だけ残し、校舎を出る
十分後…現場には既に数人の術師と補助監督が集まっていた
観光地、一般人はまだ普段通り歩いている
だが空から帳が降りている
「遊佐さん!」
若い補助監督が駆け寄る
「未確認の帳を確認しました!」
「状況…」
「帳が二重になっています」
遊佐の眉がわずかに動く
「内側の帳は、外へは出られます、でも戻れません」
「ほな、外側は?」
「中へは入れます……ですが、一度入ると外へ出られません」
遊佐は周囲を見回した
帳と帳の間
広い範囲に観光客が点在している
まだ異変に気付いていない者も多い