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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第37章 都と帳


ふと、三輪が思い出したように口を開く
「そういえば……」
「ん?」

「流鏑馬先生、元気ですか?」
遊佐の足が、ほんの一瞬だけ緩んだ

「それ……ぼくに聞く?」
苦笑混じりに返す


「だって、一番連絡取ってそうですし」
「それは、買い被りすぎやわ」
肩をすくめる

「紅海ちゃん、東京行ってから忙しいしなぁ…」
嘘ではない

でも、何度か会いには行っている
確かに連絡は以前より減った

三輪は少し笑った
「でも、流鏑馬先生が京都にいた頃って、遊佐さんとよく一緒にいましたよね。」

「あぁ……それは仕事帰りとかやろ?」
「相棒って感じでしたよ」
その言葉に、遊佐は少しだけ空を見上げる

ぼくが、紅海ちゃんと一緒におりたくて
何かと理由を付けて、会いに行った…

紅海ちゃんは、ぼくの下心なんか知りもせずに、仲良うしてくれてた

長年、同じ現場を回ってきたから

帳を下ろすタイミング、避難経路、誘導
術師が動きやすい導線確認
お互いの癖が分かるくらいには、一緒に仕事をしてきた

「そやな……元気では、おると思うで?」
少しだけ間を置いて続けた

「……絶対、無事な環境におるもんな」
その言葉だけが、少しだけ重かった

三輪は気付かない
「よかったぁ」

安心したように笑う
「また京都に来てくれませんかね?」
「来ることも、あるんちゃう?
京都の術師は東京より少ないし…応援要請とか、あるかも知れへんよ?」

遊佐も笑う
その笑顔の裏で、一つだけ思う

――来る時は、一人やない
例の件での、上層部判断の監視措置
五条悟が、紅海の隣室で監視を続けていることも、遊佐は知っている

だが余計なことは言えない
補助監督の仕事は、情報を運ぶことだけじゃない
時には、抱えたまま墓場まで持っていくことも仕事だった

校門を抜けると、木漏れ日が石畳へ落ち、どこからか鳥の声が聞こえてきた

その静けさが、あと数時間で破られることを
まだ誰も知らなかった
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