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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第36章 お見合いとデート


══閑話══

夕暮れを過ぎ、外は薄暗い
高専の事務室には、キーボードを叩く音だけが響く
伊地知潔高は、今日中に終わらせたい報告書へ視線を落とす
ふと窓の外に目をやる

校門から照明に照らされた、二つの人影が見えた
白髪の長身と、その半歩後ろを歩く女性

五条悟と流鏑馬紅海だった
どうやら、どこか2人で出掛けた帰り…
もしかしたら、流鏑馬さんの用事に監視として付き合ったのかも…

『ラーメン美味しかったよね、チャーシュー丼も!』
「紅海、デザートの焼き芋アイスまで、ペロリだもんね」

『ふふふっ、芋はベツバラだからね』
「食材別なの!?恐ろしい子!」

『えへへ、でも、もう、お腹ポンポンだよ!』
パンパンじゃなくて、ポンポンね…と五条は笑う

そんな他愛のない会話を交わしながら、二人は宿舎の方へ歩いていく
一定の距離を保っているのに、不思議とその歩幅はぴったり揃っていた
伊地知は小さく笑う
……本当に2人、仲がいいなぁ
気を遣い過ぎるでもなく、馴れ馴れし過ぎるでもなく
長い時間を一緒に過ごしてきた人間だけが持つ、自然な間合い

監視というより……
一瞬だけ浮かんだ言葉に、伊地知は苦笑する
……まるで、デートみたいな

もちろん、口には出さない
そんなことを五条に聞かれたら
「伊地知、最近余計なこと考えてない?」

と、圧を掛けられる未来しか見えない

それに、五条のあの鋭さだ
少し表情を読まれれば
「何?言いたいことある?」

と、すぐ見抜かれるだろう
伊地知は余計な面倒は避けたい
だから黙って見送る

ただ、一つだけ確信していることがあった
五条さんは、流鏑馬さんを大切に思っている
本人は認めないかもしれない
いや、認めたとしても、軽口で誤魔化すだろう

それでも、長年補助監督として五条を見てきた伊地知には分かる

あれほど自然に隣へ立たせる相手は、そう多くない
そして、流鏑馬さんも…
本人は無自覚なのだろうが、五条の隣では肩の力が抜けている

安心したように笑う
もしかすると、お互い同じ気持ちなのかもしれない
だが、それは二人自身が気付くことだ

伊地知は静かに窓から目を離すと、再び報告書へ向き直った

「……さて」
今日の仕事を終わらせよう
そう呟いた事務室には、またキーボードを叩く音だけが静かに響き始めた
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