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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第36章 お見合いとデート


映画の話は、いつの間にか途切れていた
どちらからともなく黙り、人の流れに合わせて歩く

休日の駅前は相変わらず賑やかだった
雑貨屋の店先には季節の小物が並び、本屋からは新刊を手にした学生たちが出てくる

二人は急ぐ理由もなく、その流れへ自然と溶け込んでいた
紅海はガラス張りのショーウィンドウを何気なく眺める

季節を先取りするウィンドウには、すでに冬物のブーツを履いたマネキンが飾られている
背景はハロウィン柄で
そこには生活感を出すように、テーブルにカボチャや、可愛らしいマグカップが置かれている

どれも「欲しい」と思うほどではない
でも、見ているだけで少し楽しかった

ふと、ガラスへ自分たちの姿が映る
隣を歩く長身…自分の少しだけ前を歩く
人とすれ違うたび、何も言わず進路を変えてくれる

昔から、気付けば、悟はいつも少しだけ前にいた

もしかして、わたしが人混みでぶつかるのを防いでくれてるのかな…
もしそうだとしたら、優しいな

でも、その言葉の続きは胸の奥へ沈めた

優しい…それだけ
それ以上の意味なんて考えちゃ駄目だ
その優しさに、2人だけの時は少しだけ甘えてしまおう
そう思って、小さく笑う

その横顔を、五条は視界の端で捉えていた
紅海……楽しそうだな
映画を観ている時もそうだった

驚いたり、笑ったり、終わったら主人公の動きを真剣に分析して
高専の頃と変わらない

変わったのは、立場くらいだ
教師になって…それから、監視対象になって窮屈な生活を送るようになった
それでも…今、こうして笑っている


その事実に、五条は少しだけ肩の力が抜ける
雑貨屋の前で紅海の足が止まった

並んだ動物の小物を入れる小皿を眺めている
しばらく見て、満足したようにまた歩き出す

買わないんだ…五条は少しだけ可笑しくなった

昔から、紅海は、見て満足することが多い
それでも十分楽しそうだから、不思議だったけど

「紅海?」
『ん?』

「それ欲しかった?」

紅海は首を横に振る
『ううん…ただ可愛いなって』
「ふーん」
『ほら、うちの玄関とか置いたら可愛いかなぁって思ったんだけど
飾ったとて…結局、使わなかったら勿体ないなぁって思って』
「ふはっ!紅海らしいね」
それ以上勧めることもしない…それで話しは終わり
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