第36章 お見合いとデート
紅海は足を止めた
『いいの?』
「いいよ?」
『でも、今日だって監視で付き合ってもらっちゃったし……仕事もあったでしょ?』
五条は肩へ掛けたバッグを軽く叩く
「待ってる間に終わった」
『えっ』
「ノートパソコン持ってきて正解だった」
少し得意げに笑う
『……すごっ!』
「伊地知が見たら泣いて喜ぶよ?」
『ふふっ、いや、多分もっと仕事増やされるでしょ?』
「うぇ、それは困るね?」
二人で小さく笑った
紅海は歩きなぎら、少し俯いたまま考えている
「何?」
『うーん……』
「また気ぃ遣ってる?」
図星だっただけに、紅海が苦笑する
『分かる?』
「長い付き合いだからね?僕を付き合わせるの悪いな、とか思ってるでしょ」
『……うん』
「気にしなくていいよ」
あっさりした口調だった
「今日は監視と言う名の、僕にとっては休みだからね?」
その言葉に、紅海の肩から少しだけ力が抜ける
『じゃあ……』
上映中の映画館の看板が目に入った
立ち止まり、しばらく眺める
『映画、行きたいかも』
五条も看板を見上げた
「映画?」
『最近、全然行けてなくて…何でも良いから観たいなぁって』
監視生活になってから、ふらっと遊びに出ることは減った
映画館の雰囲気を楽しみたくなる
上映作品が並ぶポスターを順番に眺めていく
恋愛、子供向けアニメ、ヒューマン系
そして、一枚のSFモンスター作品で足が止まる
異形の生命体が暗闇からこちらを見つめている
『これ…面白そう』
五条はポスターを見て、紅海を見る
「うん?」
『気になる』
「紅海ってさ…」
『え?』
「心霊映画は絶対無理なのに、こういうの平気なんだ?」
『うん』
迷いなく頷く
『だって作り物だもん』
「幽霊も作り物って言ったら?」
『言えないよ!』
真顔だった
『だって呪霊いるじゃん!』
「まぁ、いるね」
『だから夜に亡くなった人が怨めしそうに出そうなのは嫌…』
「宇宙の怪物は良いんだ?」
『宇宙ならまだ納得できる…だって、まだ未知数なんだもん』
「その基準、何年付き合っても分かんないなぁ」
『へへ、悟にも解らない事があるんだね?』
少しだけ得意そうに笑う
その顔を見て、五条も笑った