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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第35章 外出と神社



「無理!その癖、天然だから変な所、ぶっ込んでくるし」
くすくす笑う

『あれは、まだ、初対面過ぎて知らない人だったから』

「僕の事?」
『そう!』

「傷付くなぁ…初対面で、僕の事『普通のイケメン、素敵!』とか言ったくせに」
『嘘ばっかり!絶対行ってないよー!って言うか普通のイケメンって何!?』

紅海も笑ってしまう
その笑顔を見て、五条も自然に笑った

笑いが落ち着くと
紅海は少しだけ真面目な顔になる

『でもね』

布巾を畳みながら呟く
『お祖母ちゃんの顔は立てたいんだよ…私を育ててくれた人だから
だから、一回くらい会った方がいいのかなぁって』

また困ったように笑う
『でも私、押しに弱いからさ…断るの苦手なんだよねぇ……』

五条の手が、ほんの一瞬だけ止まった

"押しに弱い"

その言葉だけが妙に耳へ残る

……それは知ってる、昔からそうだ
頼まれると断れない

無理をしてでも笑うし
自分より相手を優先する

それで損をしても、あまり気にしない
だからこそ、今日まで何度も危ない目にも遭ってきた

紅海自身は、それでも他人が喜べば良い事をしたと思っている節すらある

五条は蛇口を閉め水音が止む

「だったら…」
その声は、いつもより少し低かった

『ん?』
「嫌なら断れば良いよ」
あまりにも簡単に言う

紅海は苦笑した
『それが出来たら苦労しないよ』
「しろよ」

『え?』
「苦労してでも断る…
会って、気を遣って、変に期待持たせる方が面倒でしょ」
それは珍しく、茶化しのない言葉だった

紅海は少し驚いたように五条を見る
『……そう…だよね』
「そう」

五条はそれ以上続けない
自分でも少し言い過ぎたと思った

お見合いなんか、行くなよ…
そう言う資格はない事は解ってる

ただ、紅海が"断れないから"という理由だけで、自分の将来を決めようとしているのは、妙に気に入らなかった

だから、それだけは否定した
紅海はそんな五条の内心など知らず、小さく笑う

『……ありがと…ちょっと考えてみる』

その一言に「うん」とだけ返した

いまの五条にとっては、それで十分だった

少なくとも今夜は、こうして隣で食器を拭いて笑っている紅海の方が、ずっと現実だった
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