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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第35章 外出と神社



『だから、有効かどうか分かんないけどね?』
「そんなに古いものなんですね」

『うん』

紅海は頷き、そして少しだけ肩をすくめる
『売れてないだけなんだけどね?』

七海はもう一度お守りを見る

そして棚を見る
残っている数を見る

「……売れていないのではなく、発注数に失敗したのでは?」
『あははは!確かに!昔のお祖母ちゃん、大量発注しちゃったのかもね?』

紅海が吹き出した、久しぶりに声を上げて笑う
その笑い声が社務所に広がる

七海は少しだけ安堵した
先程までのお見合いの話で曇っていた顔が消えている

その様子を見て、今日連れて来て良かった、と改めて思った

紅海はお守りを一つ手に取る
少し色褪せた糸…不格好な狛犬

『これね』
微笑み指先で撫でる

『お父さん、本気で可愛いと思ってたんだよ?』

七海は何も言わなかった
ただ、そのお守りを見る

そして父親がそれを大切そうに祖母へ見せる光景が、何となく想像できた
娘が描いた絵を本気で誇らしく思う父親の姿が

「では、一つ頂いても?」
紅海は目を丸くした

「売上に貢献しましょう」

紅海は数秒固まりそれからまた笑った
七海は手の中のお守りを見た

少し歪な輪郭で緩い線…子供が描いたと聞くと愛おしく感じる


社務所を出た七海と紅海は歩きながら話す
『私のお父さん、イタリアでエクソシストしてたんだって』

少し歩いた所、縁側に腰を掛けた

『それで、日本の呪術がどんなものか研修に来て、お母さんと出会ったみたい』

七海は静かに聞く
こういう話をする紅海は珍しかった
普段は自分のことをあまり話さない

『めちゃくちゃポジティブで明るかったなってイメージなんだけど……』
少し空を見上げる

『私、顔がはっきり思い出せなくて…写真を見るとね、"ああ、そうそう"って思うの…お父さんってこういう顔だったなって』

七海は何も言わなかった
幼い頃に親を失う
その感覚を、自分は知らない

だから軽々しく言葉を返す気にはなれなかった
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