第35章 外出と神社
七海は何も言わない
だが、思考だけが静かに回る
……いや
本人は何もないと、言っていた
五条も、そういう話は一切して来ない…
以前も告白だの付き合うだの契約めいたものは嫌いだと言っていた
では、祖母の勘違いか
あるいは、周囲から見ればそう見える距離感なのか
『お祖母ちゃん、変なこと言うのやめてよ……』
紅海が慌てている
『悟とは何も無いし……七海は今日は付き添……』
そこで言葉が止まった
付き添いと口に出しかけて、紅海自身が固まる
ヤバい、危なかった
自分が監視対象だから…とか
そんなことを祖母に言えるわけがない
『えっと』
紅海が小さく声を漏らす
浅葱がじっと見ている
七海は一瞬だけ状況を整理した
そして、何事もなかったように一歩前へ出る
「私がお願いしました」
紅海が七海を見る
七海は顔色一つ変えない
「神社巡りが趣味なので…こちらの神社で見学ができればと思いまして、ご一緒させていただきました」
あまりに自然だった
自然すぎて、一瞬、本当に趣味なのかと思えるほどに
紅海の目がぱちぱちと瞬く
ナイスフォロー……!
さすが七海!
心の中で拍手が起こる
浅葱は黙って七海を見ていた
「ほう…」
その声音が妙に意味深で、紅海の背筋がぴしりと伸びる
「神社巡りが趣味か。」
「ええ」
「そうか」
「はい」
七海は表情を崩さない
浅葱も表情を変えない
紅海だけが居心地悪そうに視線を彷徨わせている
やがて浅葱がふっと口元を緩めた
「……なるほど、真面目な子だ…」
「恐縮です」
「紅海」
『な、何?』
浅葱の様子を伺いながら返事をする…
「五条とこのは随分違うな…出来れば本当に、この子と挨拶に来てくれれば良かったのにねぇ」
『ちょ!』
すかさず浅葱はニヤリと笑う
「五条んとこのは、ほら…
お前に、不意打ちでキス…『ぬわーーーーっ!!!!!!』
『お祖母ちゃん!変なこと言うのやめて!!!』
数ヵ月前…祖母が不意打ちで家に来た時
それを知らずに五条と良い雰囲気になったのを思い出す
もう記憶の彼方に追いやったはずだったのに