第35章 外出と神社
窓の外では、スズメの鳴き声が遠くから聞こえてくる
紅海は小さなショルダーバッグを肩に掛け、靴を履いた
今日は祖母のところへ行く
久しぶりの高専の外だ
それだけで少し気持ちが軽かった
ふと、隣の部屋に気配を感じる
起きてるのかな?
紅海はロールスクリーンの方を見た
『行ってきまーす』
少し間があった
それから、隣から声が返ってくる
「んー、行ってらっしゃい」
寝起きのような、少し低い声
なんだか、ちゃんと見送られた気がして、少しだけ嬉しくなる
『行ってきます』
もう一度、小さく言って部屋を出た
校門には七海が立っていた
私服姿だ…
ジャケットに、落ち着いた色のパンツ
スーツではないだけで、驚くほど雰囲気が柔らかい
それでも、きっちりした印象は変わらない
『七海!』
七海がこちらを見る
「おはようございます」
『おはよう。今日はありがとね?本当、七海がいて助かったよ』
「そうですか」
その返事は短いが、少しだけ口元が緩んだ
紅海は気付いていないが
七海からすれば、「助かった」と素直に頼ってもらえること自体が、少し嬉しかった
日下部や夜蛾には恐縮する
その結果、自分を選んでくれた
そこに特別な意味がないことも分かっている
それでも、悪い気はしない
「では、行きましょう」
『うん』
二人は駅へ向かって歩き出した
電車に揺られる
休日の朝だからか、車内は比較的空いていた
窓の外の景色が、ゆっくりと流れていく
高いビルが減り、住宅街になり、やがて緑が増えていく
紅海は窓の外を見ていた
どこか、ほっとした顔だった
その横顔を見て、七海は少しだけ思う
……窮屈だったろうな…
普段、文句を言わない人ほど、知らないところで疲弊する
紅海は、まさにそういう人間だった
駅を出てゆっくりと歩く
『そういえば…七海、覚えてる?あの時、うちの神社で合宿したの』
「……ええ」
すぐに思い出した