第35章 外出と神社
『もー!一言余計ですけど!』
思わず頬を膨らませる
「え?事実じゃん」
『違いますぅー!ちゃんと計画して作ってますぅー!』
「へ~?」
『その"へ~?"やめて!』
ハハハ、と向こうから笑い声が聞こえる
つられて、紅海も笑ってしまう
たった一枚のロールスクリーンを挟んで、二人で笑い合う
不思議な生活…
高専時代の自分に言っても、絶対に信じないだろう
その頃の悟は、もっと遠い存在だった
手を伸ばせば届く距離にいるのに、どこか一人だけ別の場所にいるような人
でも今は、物音で存在が解る距離
なんだか変な感じだ
『じゃあ、温めて持ってくね』
「うん」
紅海は鍋を温め直し始める
ロールスクリーンの向こうで、五条は小さく息を吐いた
実のところ、今日は何も食べる気がしなかった
疲れていたし頭も使い過ぎた
適当に甘いお菓子でも摘まんで終わらせようと思っていた
なのに
「肉じゃがか……」
思わず口元が少しだけ緩む
疲れて帰ってきて
誰かに「ご飯食べる?」と聞かれるだけで、こんなに気が抜けるものなのか
自分でも少し驚いた
紅海は、肉じゃがを小鍋で温め直し、味噌汁とご飯をよそう
紅海はそれをトレーに乗せると、一度深呼吸をした。
そして、ロールスクリーンに手を掛ける
さらさらっと布の擦れる音
『お邪魔しまーす!』
隣のリビングへ顔を出す
五条はソファに深く腰掛けていた
目隠しは外し、サングラスを掛けている
長い脚を投げ出し、スマホを片手に何かを確認していたが、紅海の声に顔を上げた
「お、来たね?」
『ご飯、持ってきたよ』
「ありがと」
五条はテーブルの上の書類を片付ける
その動作に、いつもの軽さが少し足りない
ちょっと疲れてるのかな?
紅海は、その分、元気に振る舞う
『はい!肉じゃがと、お味噌汁と、ご飯でーす!』
「やった!うまそうじゃん」
『余り物だけどね』
「余り物でも、誰かの手料理ってだけでランク上がるからね?」
その言葉に、紅海は一瞬だけ目を瞬かせた
何気なく言ったのだろうけど、嬉しかった