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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第35章 外出と神社


高専宿舎

廊下の窓の外には、深い藍色の空に星が広がっていた
紅海は部屋の鍵を開けると、小さく息を吐いた

『ただいま……』

当然、返事はない
靴を脱ぎながら、なんとなく耳を澄ませる
正確には、リビングをぶち抜いて繋げた向こう側の部屋

五条の気配は――分からない

物音もしない
テレビの音も
書類をめくる音も

何も聞こえない
『まだ帰ってないのかな……』

ぽつりと呟く
最近、悟は本当に忙しい

教師の仕事、任務、あと難しい事

紅海も事情を知っているからこそ、余計に何も言えなかった

ロールスクリーンの近くまで歩いていく
少しだけ迷ってから
『……ただいま~』

軽く声を掛けてみる
返事はない…静かなままだ

やっぱり、いないか
紅海は少しだけ口元を緩めた

『忙しい人だなぁ……』

その声には、寂しさよりも、どこか感心したような響きが混じっていた
それから晩ご飯を作り

食べて、食器を洗い

お風呂にも入り、髪を乾かして

気付けば時計の針は二十時を回っていた
シンクの水滴を拭きながら、ふぅ、と息を吐く

今日は穏やかな一日だった
そう思った、その時

隣から小さな物音がした

紅海が顔を上げる
帰ってきた?

少しだけ嬉しくなって、ロールスクリーンへ近付く
『悟~?』

数秒後
「お?」

少し遅れて声が返ってきた
「ただいま…早いね、紅海、もう帰ってきてたんだ?」

その言い方に紅海は時計を見る

二十時四十五分

『うん任務の範囲も時間も絞られてるからねぇ……』

監視下に置かれてから、長距離任務や長時間任務は基本的に外されている
ありがたい反面、少しだけ複雑だ

『悟は今からご飯?』
「あ~……」

向こうで何かを置く音がする
「ま、適当に済まそうかなって」

その言葉を聞いて、紅海は少し考えた

多めに作った肉じゃが
『もし良かったら、晩御飯、食べる?』
「ん?」

『明日の朝と、お弁当用に多めに作ってたんだけど……』

少し申し訳なさそうに言葉を足す
『お味噌汁と肉じゃが……ごめん、サラダ全部食べちゃった』
「……良いの?」

声のトーンが、ほんの少しだけ柔らかくなった

『うん』
「さすが大雑把の紅海!大量に作るのが好きで助かる~」
笑う気配がする

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