第3章 III
数分程待つと謝必安が戻ってきた。
「無咎、戻りましたよ」
范無咎が頷き、謝必安から料理を受け取る。
『謝必安〜!来たよー!』
「おや、さん…とジャックさんも。来てくれたんですね」
彼が嬉しそうにを見た後、棚から何かを取り出す。
「これ、この間のカップケーキのお礼です。無咎と食べたらとても美味しかったので、是非お二人で食べてください」
『え!!これ、美味しいクッキーだ!いいの?』
「えぇ。さんはクッキーが好きだと聞いているので」
『やったー!ありがとー!ジャック、後で一緒に食べようね♪』
「はい。」
用は済んだか、とでも言うようにジャックに見つめられる。
『あの、謝必安、もう大丈夫?』
「はい、今日はこれを渡したかっただけなので。わざわざありがとうございました」
『こちらこそありがとう〜!食べたら感想言うね〜!』
「楽しみにしていますね」
ジャックに手を引かれて部屋を出る。
『…ジャック、今日はどうしたの?なんか変だよ』
「………」
無視されてしまった。聞いても答えてくれないのなら、私にできることは無い。
部屋に戻ると、布団に投げられる。
「」
『っ』
ジャックが私を呼び捨てするのは、怒っている時だけだ。
…それも、かなり怒っている時。
『…はい』
「ジョゼフと抱き合っていたのはなんですか」
『抱き合ってない!!あれはっ、ジョゼフが勝手に抱きついてきただけで…』
「どうして?」
苦しそうな声で聞かれる。
仮面の下の顔は苦痛に歪んでいる。
あぁ、ジャックは本当に傷付いたんだ。
嫌でも気が付く。同時に、ジャックが私をどれ程愛しているかも伝わってくる。
『あのね、あれは本当に…うーんとね…』
ジャックは私の言葉を大人しく待っている。
『マリーとジョゼフ、どっちのお菓子を食べるかで色々あってね…?
うーんと、マリーがジョゼフなんてほっとこって言ったから、ジョゼフとも話したいって言ったの。
そうしたら、ジョゼフに抱きつかれたの』
ジャックがまだ納得いかなそうな顔をしている。
『ごめんね、私も…ああなるとは思わなくて』
少しの沈黙が二人の間を通る。
「……はぁ、もういいです」