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【第五人格】灰色の世界を抜けて

第3章 III


「お前、ジャックはどうした」

今一番聞きたくない名前を出され、呼吸が一瞬止まる。

『…え、と』

手が震える。すると、アルヴァがそっと手を重ねてくれる。

「…すまない。変な事を聞いたか」

『ううん、全然…』

ココアをまた一口飲む。温かくて甘くて美味しい。

「…何か、あったのか。お前たちはいつも一緒に居ただろう」

表情は確認できないが、その声色から心配してくれているのはわかる。

言うかどうか少し悩んだ後、結局言うことにする。

『…ちょっと、喧嘩?みたいなことしちゃって…その場に居られなくなっちゃって、逃げ出したの』

「逃げ出した…?荘園の外には出られないはずだが」

『えっ?』

私はその辺の詳しい説明は聞いていない。

荘園から出られると思って外に走っていたのが馬鹿みたいだ。

ただそうなると、どこに行くかが問題になる。

悩みに悩んで難しい顔をしていると、アルヴァに想像もしなかった提案をされた。

「…私の部屋に居るか?」

『え?』

「喧嘩をしたのだろう。戻りたい時に戻ればいい。食事も、希望なら私がついでに取ってこよう」

『えっ、あのっ、良いの?こんなろくに話した事も無いような私を…』

「構わん。ただし、煩くするな。」

彼が腕時計を確認して立ち上がる。

「食事を取ってくる。お前は休んでおけ」

彼はそう言うと上着を羽織って、部屋を後にした。

…なんだか、いつもより静かだ。

落ち着かないけど落ち着く、矛盾した感覚になる。

手をグーパーして感覚を確かめる。一応、動く。

『ふんぬぬぬぬ』

プルプルと震えながら起き上がろうとする。

身体にうまく力は入らないが、一応起き上がることは出来た。

『はぁ…』

起き上がるだけで息が少し上がってしまった。

壁にもたれかかり、息を整える。

「戻ったぞ。…起き上がれたのか」

少し目を細め、嬉しそうにアルヴァが言う。

『ちょっとだけ。壁が無きゃ後ろに倒れちゃいそう』

「そうか。なら背もたれを使えばいい」

ひょいと抱き上げられ、椅子に座らされる。

「箸は持てるか?」

『うん、お箸は持てる。ありがとう』

彼は頷くと、杖を持ってまたどこかへ行こうとする。

「今日は少し用事がある。すぐ戻るから、大人しくしていろ。」
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