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【第五人格】灰色の世界を抜けて

第3章 III


フォークが皿に当たる高い音が、耳に響く。

ジャックが少し動く度に動悸がする。

このままじゃいけない気がする。私から距離を縮めなきゃ。

『ジャック、今日は私が片付けに行くね』

「大丈夫です。部屋にいてください。」

『じゃっ、じゃあっ、ココア入れるねっ』

「今は大丈夫です。」

何を言っても拒否されてしまう。

それが、距離を取られているということなのだと、遅れて理解する。

きっと今は、何も言わない方がいい。

「食べ終わりましたね?」

ジャックが空いた皿を重ねる。

「片付けてきます。」

ジャックは、の返事を待たずに部屋を後にした。

……

しばらく待っても、彼が帰ってこない。

不安になって廊下に出ると、珍しくサングリアと談笑している。

慌ててドアを閉める。


楽しそうだったな。私とさっき居た時は、笑顔が無かったのに。

もしかしたら本当に愛想を尽かされたのかもしれない。

不安がぐるぐると胸中を渦巻く。

『ぉえ……っ』

急いでトイレに駆け込む。

便器に顔を向けるが、出てくるのは唾液と涙と鼻水だけだ。

このまま、捨てられてしまったらどうしよう。

……彼はきっと、私が居なくても、普通に暮らせる?


少し落ち着いた後、トイレから出る。洗面所で顔を洗おうと、鏡を見る。

目元を腫らし、顔がびしょびしょの自分が見える。

『……酷い顔』

さっさと顔を洗う。

ジャックは、まだ戻ってこない。

『……』

彼にとって、きっと私は邪魔なんだ。

このまま逃げ出してしまおう。

靴を履き、窓から外に出る。

冬の冷たい風が肌を刺してくる。上着が無いと厳しい季節になってきた。

窓から出れば、きっとジャックにもバレない。

少し後ろを振り向く。部屋からは暖かい光が漏れている。

……戻るなら、今だ。

いや、考えるまでも無いか。


私は、部屋から遠ざかるように走った。
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