ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる
第23章 第二十三話
その後、セカは、「また来る」と告げてフェンリル国に帰って行った。
そして、ユラくんは帰らずにここに残ったのだった。
「私はずっと、冒険者に登録して、旅の資金を稼いでいました。フェンリルには確かに前の両親もおりますが、私にとっての居場所はシアンさんの元です」
ユラくんは、「叶うなら、近くに暮らしたい」と言った。
「まあ。いいじゃない!元サヤってやつね。つもる話もあるだろうから、今日はシオちゃんは私と夕飯食べて、一緒に寝てましょうねー」
と、レイニーさんが言ってくれたため、私とユラくんは二人でご飯を食べに出た。
私は、皆でよく来るリーズナブルな食堂に案内した。
「ここはね、煮込み料理がとってもおいしいんですよ」
私がユラくんにメニューを見せながら、笑顔で説明していると、急にジッと見つめてきた。
「え?何?何かついて…」
「シアンさんは。本当に綺麗になりましたね」
私が慌てて顔を触ると、急にそんなことを言われて、余計慌ててしまった。
「やめてくださいよ。私は子育てでくたびれてるただの母親ですよ…。からかわないでください」
思わず目を背けると、
「貴女は魅力的な女性だと、思ってますよ。昔はまだあどけないところがありましたけど…」
「それは!ユラくんだって、大人っぽくなって、お・男らしくなったと、思います、よ…」
褒めるのも褒められるのも苦手のため、言葉の始終眼が泳いでしまった。
「シアンさん、そういうセリフは私のほうを見て言ってもらいたかったです」
「恥ずかしいんですよ!!!すごく!!」
もう知らない!とばかりに、私はメニューを広げて顔を隠した。
なんで?なんかすっごく口説かれてる気がするんですか。なぜ??
私は目が回りそうだった。
(ユラくんってこんなタイプだったっけ?そうだったような気もするし…昔以上のような気もするし)
「こうしてゆっくりシアンさんとご飯が食べれるのもうれしいです。あの頃は、ラドクリフ様を交えてのお食事会でしたから」
食べ物が届き、おいしい煮込み料理に舌鼓していると、ユラくんはしみじみと言った。
確かに、こんな風にユラくんと時間を過ごすことになるとは思わなかった。