ぐうたらの私が異世界で帽子屋(マッドハッター)になる
第19章 第十九話
「何あのお城…」
全員、お城をキョロキョロと見渡す。
(あのお城から、あの気配がする…)
私はシルクハットを握りしめて、お城を見上げる。
「あーれー?やっぱり帽子屋だぁ~」
ゆっくりした口調で、私のすぐ横に現れた男がいた。
みんな一斉に臨戦態勢に入る。
「やだな~。そんな物騒な物を向けないでよ。君たちのピンチを救ったのは、僕だよ?」
そう言って、一度姿を消した男は、今度は門の上に現れた。
「どういうこと?」
レイチェルさんが剣を構えながら聞くと、
「オークに襲われてたところに、僕がこのお城の階段を出したんだよ。このお城は僕の城だよ」
そう言って、門の上で「ようこそ」とうやうやしく一礼した。
「そ、そんなことができるの?」
「できるともさ。この城は僕の意思でいろんなところに現れたり、消したりできるのさ」
男は再び姿を消した…煙のように。
「そうそう、僕が用のあるのは帽子屋だよ。君に会いに来た」
私の目の前に煙が集まってきたかと思うと、その煙が人の形になり、あの男が出現した。
「あ、あなたは、マッドの知り合いですか?」
「マッドは僕の古い友人だったよ。でも今はもういない」
そう言って私の手を掴み、手の甲にキスをした。
「あ!ばっちぃ!!」
シオがそれを見て怒る。
「…僕は子どもは苦手でね!帽子屋は借りていくよ」
男はそれだけ言い残し、私の腰に腕を回すと、そのまま煙のように消えた。
「ママーー!!」
遠くでシオの声が聞こえた気がした。